不動産価格を左右する「需要と供給の原則」─都市と地方で異なるメカニズム
こんにちは!専業主婦から不動産鑑定士になった藤田です。今回のテーマは不動産の価格を左右する需要と供給の原則についてです。
1、通常の市場
不動産の価格形成を考える上で、基本的かつ重要な原理が「需要と供給の原則」です。
一般に、あらゆる財の価格は需要と供給の相互作用によって決定され、価格の変化は同時に需要・供給の双方にも影響を及ぼします。
不動産もこの原則に従う点では同様ですが、他の財とは異なり、自然的特性(移動不能性・個別性・永続性など)および人文的特性(社会的・経済的・行政的要因)を有しているため、価格形成の過程においてこれらの特性が顕著に反映されます。
都市部における「供給制約」と価格上昇
2、供給曲線の傾きが大きい市場
都市部、特に都心部では、不動産の供給は物理的にも制度的にも制約を受けています。
限られた土地に対して、住宅・商業施設・オフィスなど多様な用途が競合し、新規供給が容易ではありません。
その結果、わずかな供給の減少でも価格が大幅に上昇しやすく、供給曲線の傾きが大きい市場と考えられます。
近年の新築マンション市場では、建設コストの上昇や用地不足などを背景に供給が抑制され、価格が高騰する傾向が続いています。
地方部における「需要の減退」と価格下落
3、需要曲線の傾きが大きい市場
一方、地方や過疎地域では、人口減少や経済活動の縮小により不動産需要が低迷しています。
供給余力があっても、それを吸収するだけの需要が存在しないため、取引は停滞しやすく、価格も低水準にとどまります。
需要の変動が価格に与える影響が大きい点から、需要曲線の傾きが大きい市場と位置付けられます。
中には、維持管理や相続負担の方が大きく、「無償譲渡しても引き取り手がいない」事例も見られます。
不動産市場の価格形成を理解するには、単に「人気の地域だから高い」「地方だから安い」といった表面的な見方だけではなく、地域の特性に応じて、需要と供給のどちらが価格決定により大きく作用しているのかを分析することが必要となります。

